技術情報カテゴリー: 点検・診断

高圧受配電設備の劣化評価技術

概要

①設備劣化度と②操業影響度を数値化し、総合的な評価・更新計画(設備の更新順位を決定、更新予算の平準化)を

提案することにより、お客様設備の安定稼働に寄与します。

[受配電設備の劣化評価ステップ]

設備稼働年数による更新計画ではなく、以下をを総合的に評価し、リスクマネージメントのとれた更新計画を策定。

①設備劣化状況

②故障時の復旧時間

③生産損失

<受配電設備の更新計画策定ステップ>

設備の現状や管理情報の調査

 ●点検・診断・整備履歴
 ●故障履歴
 ●予備品、遊休盤の有無

配電盤本体・遮断器(ブロック単位)を

 ●劣化度(100点満点)
 ●操業影響度(50点満点)
 ●生産損失

の総合点で評価し、更新優先順位を決定

設備投資予算の平準化

 ●全体投資予算算出
 ●中期計画(3年~10年)立案

年度設備実行計画の立案

 ●老朽更新ニーズ(劣化、操業、陳腐化)
 ●停電ミニマム、安価施工、再設計

[劣化更新優先度評価]

 設備環境・点検結果・履歴による劣化度と故障時の操業影響より更新評点を決定します。

老朽更新優先度評価 評価点
区分 項目
Ⅰ 総合的な劣化度 ①寿命評価 0~40点
②劣化状況(当社の機器判定基準) 0~50点
③環境安全 0~10点
Ⅱ 故障復旧時間 ④相対的な復旧時間(予備品・遊休盤の有無) 0~25点
Ⅲ 操業損失 ⑤停電影響範囲(負荷設備規模) 0~25点

劣化度評価・操業影響度評価指標 (概念)

[更新優先度評価・更新計画策定 参考事例]

①劣化度・操業影響度より総合点評価⇒順位決定②更新予算の平準化 ⇒ 更新計画策定

下の表は受配電設備の総合評価事例、更新計画推奨事例です。

電気室 稼働年

機器

盤数

劣化度評価(MTBF)
① 配電盤本体
劣化度評価(MTBF)
② 遮断器
操業影響評価
(MTTR)
劣化度評価

操業

影響

評価

総合

評価点


寿命
評価

劣化
状況

環境

寿命
評価

劣化
状況

復旧
時間

停電
影響
A地区 KH 電気室 1968 21 13 8 1 19 9 9 17 50 26 260
      A 電気室 1968 4 13 9 1 19 9 15 6 51 21 214
  B 電気室 1968 6 13 8 1 19 9 12 9 50 21 210
  C 電気室 1968 6 13 10 1 19 11 15 10 54 25 270
B地区 D1 電気室 1968 5 13 9 2 19 11 15 9 54 24 260
  D2 電気室 1968 8 13 8 2 19 12 15 12 54 27 292
  D3 電気室 1968 6 13 7 1 19 12 12 6 52 18 187
  E1 電気室 1968 9 13 7 2 19 12 9 12 53 21 223
  E2 電気室 1968 3 13 9 2 2 10 9 9 36 18 130
C地区 5T 電気室 1962 5 13 13 2 17 14 16 9 59 25 295
  T 電気室 1966 5 13 9 2 17 16 20 9 57 29 331

更新優先度評価表_事例

年度 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 2020年 2021年 2022年 2023年 2024年
総合評価点 331 295 292 270 260 223 214 210 187 130
A地区       C電気室 KH電気室   A電気室 B電気室    
B地区     D2電気室 D1電気室   E1電気室     D3電気室 E2電気室
C地区 T電気室 5T電気室                

更新計画推奨表_事例

振動可視化カメラを活用したメンテナンスソリューション

概要

振動可視化カメラを活用して異常部位を絞り込み、当社の診断知見と組み合わせることで、最適な診断方法を選択し、より早く設備の状態を把握して原因究明や対策案を提案します。

当社は、いち早くRDI社の振動可視化技術に着目し、現場での試用を重ね実用ノウハウの蓄積し当社の設備診断経験と融合することで、複合診断の高度化・効率化を果たしました。

右の事例は押出機のケーシングに亀裂が発生し、製造メーカーで対応しましたが解決できず、当社にて振動原因を調査し対策まで提案し緊急対応したものです。

従来は多数のひずみゲージや振動センサを設置し、計測解析に多くの時間をかけて診断経験により解明してきた設備の動き(振動モード)を可視化カメラを適用したことで短時間に把握することができ、的確な補強箇所を選定することで、効率的にお客様の悩みを解決しました。

特長

振動可視化カメラは人の目では感知できない微小振動を肉眼で見えるレベルまで増幅させることができ、映像から異常部位を絞り込むことや振動変位や周波数解析を行うことで異常原因を推定することが可能となります。

振動を最大100倍まで増幅し肉眼では見えない振動状態が見れる

設備を停止せずにカメラを設置し、計測が可能

実際の映像により異常現象が理解し易く、対策が検討し易い

振動応答性=0~100Hz 

実績

・化学     脱水押出機異常振動原因究明
・電力(発電所)縦型ポンプ異常振動原因究明
・製鉄所    ブロワ振動診断
・石油     ポンプ・配管異常振動原因究明

複合診断による設備異常の原因究明技術

概要

設備診断は、機械要素部品の劣化を定量化し破損前の適正なタイミングで交換することを目的としています。これに対して複合診断では、実際にはなぜシャフトに亀裂が入ったのかなど設備異常になった根本原因や製品の品質歩留低下の原因を複数の診断技術(振動・応力・潤滑分析・非破壊・3D計測等)を組合わせて究明し、改善案を提示します。

[複合診断の流れ]

お客様からのご相談を受け、現場下見・図面・設備の履歴・操業方法など調査し、診断計画を立案します。

計画後は、現地測定(現場一次所見)⇒解析⇒評価(原因の究明)を行い、原因に対してはお客様の諸事情に則した対策案を含めて

報告します。この中で特に診断計画の立案と解析原因究明は、多くの診断経験と技術が求められます。

実績

  • 油圧プレス機 シリンダーロッド折損原因究明

設備状態を評価することなく使用を継続されたためシリンダーの折損に至り、復旧まで1ケ月という致命的故障となりました。お客様から故障発生防止のための折損原因解明を依頼を受け複合診断を行いました。


①診断計画の立案
まずは設備の動きを想定し、定量化するために、診断計画を立案しました。

現場下見と図面考察および故障発生個所から、必要な測定箇所・項目・適性なセンサを選定します(このケースでは変位・応力・圧力など約10箇所を最終的に選定)。


② 測定解析評価
設備の停止タイミングをお客様と調整のうえ、センサの仮設工事を行い稼働中のデータを収集します。収集した時系列データから設備の動き解析した結果、油圧シリンダーの内部リークによる左右の不同調動作により、ロッド固定部へ繰り返し負荷がかかることにより折損に至るメカニズムを解明します。

③ 結果報告と対策案提案
お客様には調査解析結果と根本的な原因をできるだけ分かりやすく報告します。
また、合わせて今後の効率的な設備の維持管理方法を対策として提案します。具体的には、定期診断を年1回実施し設備状態を監視するとともに、その結果を受けて整備を優先するプレス機を決定するという当社の提案を採用頂き、当社にプレス機の定期診断と整備をご依頼いただきお客様の安定操業の一端を担っています。

適用事例の流れ

CVケーブル劣化診断技術

概要

CVケーブルの寿命は、敷設環境等によっては10年~20年程度であり、劣化の主原因として水トリーが知られています。

本診断は、従来の直流漏れ電流法では困難であった未橋絡水トリーの検出を、逆吸収電流法(IRC法)を用いて行います。

[水トリー劣化について]

CVケーブル事故原因のうち、水トリー劣化によるものは全体の約35%を占めています。未橋絡水トリーが進展すると、下図のように、やがて絶縁体を貫通し橋絡水トリーとなります。

[特徴]

高圧ケーブル…橋絡水トリーの発生後も運転電圧では直ぐには絶縁破壊しない
特高ケーブル…未橋絡水トリーの状態から絶縁破壊に至る恐れがある

(出典:末永 清佳,榊原 崇志「IRC法による電力ケーブル診断技術の現場適用)診断実績の整理と課題の抽出)」2017年電気学会電力・エネルギー部門大会

電気学会編「電気設備の診断技術[改訂版]」オーム社,2003年

特長

CDS(Cable Diagnostic System)診断は、逆吸収電流法(IRC法)を用いて未橋絡水トリーの検出を行うもので、直流漏れ電流法のように高電圧を印加せず、またケーブルへのストレスを与えず実施可能です。

また、未橋絡水トリーの検出が可能な残留電荷法は、対象が22kV以上で大型診断車を必要とする特高専用の診断手法です。

<対象ケーブル>

種類 CV,CE(単芯,3芯,トリプレックス)等
使用電圧 3kV~22kV
亘長 約50m~2500m(静電容量:0.01μF~2.00μF)

<診断手法>

  使用電圧
(kV)
水トリー検出 ケーブルの
ストレス
診断装置
橋絡 未橋絡
CDSケーブル診断
(逆吸収電流法)
3~22
直流漏れ電流法 3~11 × 高※
残留電荷法 22~77

※ IEEEでは5年以上使用したケーブルへの適用は推奨されていません

[逆吸収電流法(IRC法)の診断方法]

ケーブルに直流電圧を印加後の放電特性から、水トリーを評価するオフライン診断方法で、水トリー劣化が存在するケーブルの場合は、水トリー内部に蓄積された電荷が時間を掛けて放出される特性を利用しています。

<診断手順>

①充電 30分間(芯線と遮蔽層間にDC1000Vを印加)
②放電 5秒間
③測定 30分間(放電時の逆吸収電流を測定)

診断事例

診断事例は以下のとおりです。

<主な評価指標>
①Neuronal determination…解析ソフトに蓄積されたデータベースを参照して導かれる判定です
②評価値(A-Value)…劣化の度合を数値化したものです
③IRC-Plot…未橋絡水トリーが進行したものほど、波形ピークが右方へシフトした形となります
④推定破壊電圧…解析ソフトに蓄積されたデータベースを参照して導かれた推定値です

<診断時の推奨事項>
  • 測定開始2時間以上前に停電させること(ケーブルの完全放電と温度安定化のため)
  • 遮蔽層が接地, 破断していないこと
  • 芯線の絶縁抵抗が著しく低下していないこと(100MΩ以上)
  • 遮蔽層の絶縁抵抗が著しく低下していないこと(1MΩ以上)
  • (測定時)端末部の養生が適切に実施されていること(風, 振動, 雨, 雪等の影響を受け易い)
  • 両端末は離線され清掃されていること

高圧発電機・電動機のオンライン絶縁劣化診断技術

概要

高圧発電機・電動機の固定子コイルでは、主絶縁層等の劣化進行に伴い部分放電が発生・増大し、絶縁破壊の原因となります。本診断により、劣化の予兆である部分放電をオンラインで定期監視することで、突発的故障の未然防止が可能です。

[電動機故障原因]

三相誘導電動機の故障発生状況は、巻線関係の原因による故障が約30%を占めており、予防保全として絶縁診断が必要です。
特に、劣化要因の中でも部分放電は、機器の絶縁層を侵食するほか硝酸生成により機内構造物を腐食させる危険があります。

(出典:日本プラントメンテナンス協会編・出版「電動機のメンテナンス」,1995年)
[適用効果]

オンライン診断は、診断の都度設備を停止する必要がなく、診断周期を短くすることで異常を早期に発見できるほか、オフライン診断で見逃された劣化を検出できるメリットがあり、オフライン診断と組み合わせることで予防保全の質を高めることができます。

[オンライン絶縁診断の構成]

結合コンデンサ法による診断の回路構成を以下の通りです。対象機器の主回路に静電カプラと呼ばれるコンデンサと、検出BOXを常設します。

診断手法結合コンデンサ法
試験電圧運転電圧
試験時間約1時間
対象機電動機,発電機
電圧:高圧・特高(3kV以上)
容量:数千kWクラス(静電カプラ設置スペース次第)
[評価指標]

本診断による評価指標を下に示します。
①Pulse Height Graph(放電電圧-頻度特性)
②Distribution Graph(放電電圧-位相特性):部分放電信号(プラスパルス・マイナスパルス)の強度・頻度・位相特性を示した波形
③Max Pulse Amplitude(Qmax:最大放電電圧):部分放電の大きさを定量的に評価する指標。絶対値として判定を行います
④Normalized Quantity Number(NQN:総放電電荷量):放電電荷量の総和(放電電圧-頻度特性の面積)で、全体的な劣化を示す指標

評価指標

特長

部分放電発生部位の推定

プラスパルス・マイナスパルスの優劣から、鉄心スロットと主絶縁の間での放電(スロット  放電)、導体と主絶縁の境界部に生じた空隙での放電、主絶縁内部に生成した空隙での放電(ボイド放電)等の、放電部位の推定が可能です。

巻線やクサビゆるみの推定

負荷や巻線温度の変動によってパルスが大きく変化する場合は、スロットに生じた空隙の形状が変化しているものと考えられます。

事例

測定開始から5年の時点でプラスパルスの急増が見られ、スロット放電の増加が疑われました。
開放点検の結果、コロナ防止システムの一部消滅が確認されたため固定子コイルを更新し、最大放電電圧が測定開始時のレベルまで低下しました。