概要
高圧発電機・電動機の固定子コイルでは、主絶縁層等の劣化進行に伴い部分放電が発生・増大し、絶縁破壊の原因となります。本診断により、劣化の予兆である部分放電をオンラインで定期監視することで、突発的故障の未然防止が可能です。
[電動機故障原因]
三相誘導電動機の故障発生状況は、巻線関係の原因による故障が約30%を占めており、予防保全として絶縁診断が必要です。
特に、劣化要因の中でも部分放電は、機器の絶縁層を侵食するほか硝酸生成により機内構造物を腐食させる危険があります。
[適用効果]
オンライン診断は、診断の都度設備を停止する必要がなく、診断周期を短くすることで異常を早期に発見できるほか、オフライン診断で見逃された劣化を検出できるメリットがあり、オフライン診断と組み合わせることで予防保全の質を高めることができます。
[オンライン絶縁診断の構成]
結合コンデンサ法による診断の回路構成を以下の通りです。対象機器の主回路に静電カプラと呼ばれるコンデンサと、検出BOXを常設します。
診断手法 | 結合コンデンサ法 |
試験電圧 | 運転電圧 |
試験時間 | 約1時間 |
対象機 | 電動機,発電機 電圧:高圧・特高(3kV以上) 容量:数千kWクラス(静電カプラ設置スペース次第) |
[評価指標]
本診断による評価指標を下に示します。
①Pulse Height Graph(放電電圧-頻度特性)
②Distribution Graph(放電電圧-位相特性):部分放電信号(プラスパルス・マイナスパルス)の強度・頻度・位相特性を示した波形
③Max Pulse Amplitude(Qmax:最大放電電圧):部分放電の大きさを定量的に評価する指標。絶対値として判定を行います
④Normalized Quantity Number(NQN:総放電電荷量):放電電荷量の総和(放電電圧-頻度特性の面積)で、全体的な劣化を示す指標
特長
部分放電発生部位の推定
プラスパルス・マイナスパルスの優劣から、鉄心スロットと主絶縁の間での放電(スロット 放電)、導体と主絶縁の境界部に生じた空隙での放電、主絶縁内部に生成した空隙での放電(ボイド放電)等の、放電部位の推定が可能です。
巻線やクサビゆるみの推定
負荷や巻線温度の変動によってパルスが大きく変化する場合は、スロットに生じた空隙の形状が変化しているものと考えられます。
事例
測定開始から5年の時点でプラスパルスの急増が見られ、スロット放電の増加が疑われました。
開放点検の結果、コロナ防止システムの一部消滅が確認されたため固定子コイルを更新し、最大放電電圧が測定開始時のレベルまで低下しました。