概要
CVケーブルの寿命は、敷設環境等によっては10年~20年程度であり、劣化の主原因として水トリーが知られています。
本診断は、従来の直流漏れ電流法では困難であった未橋絡水トリーの検出を、逆吸収電流法(IRC法)を用いて行います。
[水トリー劣化について]
CVケーブル事故原因のうち、水トリー劣化によるものは全体の約35%を占めています。未橋絡水トリーが進展すると、下図のように、やがて絶縁体を貫通し橋絡水トリーとなります。
[特徴]
高圧ケーブル…橋絡水トリーの発生後も運転電圧では直ぐには絶縁破壊しない
特高ケーブル…未橋絡水トリーの状態から絶縁破壊に至る恐れがある
電気学会編「電気設備の診断技術[改訂版]」オーム社,2003年
特長
CDS(Cable Diagnostic System)診断は、逆吸収電流法(IRC法)を用いて未橋絡水トリーの検出を行うもので、直流漏れ電流法のように高電圧を印加せず、またケーブルへのストレスを与えず実施可能です。
また、未橋絡水トリーの検出が可能な残留電荷法は、対象が22kV以上で大型診断車を必要とする特高専用の診断手法です。
<対象ケーブル>
種類 | CV,CE(単芯,3芯,トリプレックス)等 |
使用電圧 | 3kV~22kV |
亘長 | 約50m~2500m(静電容量:0.01μF~2.00μF) |
<診断手法>
使用電圧 (kV) |
水トリー検出 | ケーブルの ストレス |
診断装置 | ||
橋絡 | 未橋絡 | ||||
CDSケーブル診断 (逆吸収電流法) |
3~22 | △ | ○ | 低 | 小 |
直流漏れ電流法 | 3~11 | ○ | × | 高※ | 小 |
残留電荷法 | 22~77 | △ | ○ | 低 | 大 |
※ IEEEでは5年以上使用したケーブルへの適用は推奨されていません
[逆吸収電流法(IRC法)の診断方法]
ケーブルに直流電圧を印加後の放電特性から、水トリーを評価するオフライン診断方法で、水トリー劣化が存在するケーブルの場合は、水トリー内部に蓄積された電荷が時間を掛けて放出される特性を利用しています。
<診断手順>
①充電 30分間(芯線と遮蔽層間にDC1000Vを印加)
②放電 5秒間
③測定 30分間(放電時の逆吸収電流を測定)
診断事例
診断事例は以下のとおりです。
<主な評価指標>
①Neuronal determination…解析ソフトに蓄積されたデータベースを参照して導かれる判定です
②評価値(A-Value)…劣化の度合を数値化したものです
③IRC-Plot…未橋絡水トリーが進行したものほど、波形ピークが右方へシフトした形となります
④推定破壊電圧…解析ソフトに蓄積されたデータベースを参照して導かれた推定値です
<診断時の推奨事項>
- 測定開始2時間以上前に停電させること(ケーブルの完全放電と温度安定化のため)
- 遮蔽層が接地, 破断していないこと
- 芯線の絶縁抵抗が著しく低下していないこと(100MΩ以上)
- 遮蔽層の絶縁抵抗が著しく低下していないこと(1MΩ以上)
- (測定時)端末部の養生が適切に実施されていること(風, 振動, 雨, 雪等の影響を受け易い)
- 両端末は離線され清掃されていること